椎葉平家まつり 二日目 【後編】
法楽祭の余韻に浸りつつ、椎葉小学校のグラウンド駐車場で車中泊した翌朝。(車中泊する人は結構います。村内のお宿が満室で宿泊をあきらめている方にはおすすめの平家まつりの楽しみ方ですよ。)
七時前に駐車場担当の方々が集まって朝礼が始まりました。二日目も安全にスムーズに、来場者の皆さんがまつりを楽しめるよう打合わせをして、それぞれの持ち場へと散って行かれました。ここにもたくさんの縁の下のカ
持ち。
「ありがとうございます」
そう呟かずにはいられません。
「やや、 ここは戦場か?足軽たちが弁当を食っている!」
と言いたくなるくらい違和感なく周囲に溶け込んでいる少年たち。
ここは『大和絵巻武者行列』の衣装着付けの拠点となっている、高齢者センター横の階段です。
それにしても、鎧《よろい》姿がぴったり似合う椎葉の少年たち。八百年前の若武者たちも、遠い関東あたりから遥々|旅をして、こんなふうに椎葉で弁当を食べていたのかな?と想像されてくるのでした。
さて、二日目のお昼を迎える頃、来場者の数も最大に増え、出店も大賑わい。
猪肉を焼く香ばしい匂い。あったかい椎葉の蕎麦。こんにゃく、ぜんざい、もち、だんご。まんじゅう、梅干し、はちみつ、とうきび、ダムカレー。椎葉の味に舌鼓を打ちながら、舞台では有名歌手のコンサート。まつりの雰囲気も最高潮に盛り上がってきます。
そうしていよいよ午後一時、椎葉平家まつり最大の見所、『大和絵巻武者行列・郷土芸能パレード』がスタートするのです。
行列のスタートは宮崎学園吹奏楽部のマーチングから。その後、もちろん「ひえつき節」、馬に乗った源氏の武者たち、神楽や臼太鼓踊り、山法師《やんぼし》踊りなど伝統芸能の行列が役場前から鶴富屋敷までねり歩き、帰りは平家の姫たちと、かわいい稚子|行列も加わって一層華やかに役場前に帰って来るというわけです。
道中、武者や姫たちの衣装はもちろん目を引きますが、なんと言っても可愛いのが馬たちです。たくさんの人に囲まれて、時には犬も見物している中を、おとなしく歩いていく姿は、なんとも健気で、思わず人参をあげたくなるほど。
さて、これだけの人が行列に参加したのでは、観る人がいなくなるのではないか?と思われる程ですが、そこは心配ご無用。もっともっとたくさんの人が見物に沿道を埋め、行列の最後尾をついて行くのです。まつりの様子は
光ケーブルで村内全戸に生中継されていますから、会場に来られない人など、もっとたくさんの人が見守ったというわけです。
こうして、二日間のまつりは幕を閉じます。泊まり込みでまつりを盛り上
げた宮崎学園高校吹奏楽部のみんなも爽やかな笑顔で椎葉を後にしました。
主役の二人もこの笑顔。ようやく肩の荷が下りて、現代人に戻れたようです。
片付けの手際の良さも驚く程で、大きな設備を残して、普通サイズのテン
トなどは、あれよあれよという間にたたまれて、あれだけあった椅子もきれ
いに一ヶ所に積み上げられました。
まつりの賑わいはあっと言う間に引いてしまって、上椎葉一帯は落ち着き
を取り戻します。
「ああ、本当に夢のような一一日間だったなぁ」
関わった多くの人がこの夕方、つくづくそう思うことでしょう。椎葉の人
たちの「おもてなしの心」がたくさんの人を惹きつける椎葉平家まつり。関
係者のみなさん、本当にお疲れ様でした。