見出し画像

【協力隊活動日記】かてりえ寄席 episode0

 筆者は4月半ばに東京から椎葉に移住してきましたが、東京と椎葉の大きな違いに、エンタメに触れる機会の差があると感じています。例えば東京では、浅草に行けば寄席が毎日開かれており、自由に落語を見ることができます。

 しかし、無いものを嘆いていても始まりません。無いなら作ってしまうのが椎葉流。

 なんと、Katerieに勤務する二人の地域おこし協力隊員、「飛び出す司書」の長谷川さんと、「時おこす司書」の藤江さんが、それぞれ講談と落語を嗜まれるらしいのです。長谷川さんはカルチャースクールで講談を学んでおり、藤江さんは大学の落語研究会で落語をやっていたとのこと。

 この二人が協力し、6/7(水)に「かてりえ寄席 episode0」が開催されました。演目は以下の通りです。

全部で1時間の寄席です

 まず、藤江さん、もとい北鷹亭和鵬築ほくおうていおほーつくの「動物園」という演目です。

 何をやらせてもダメな男が主人公で、これまでに何度も色々な仕事をクビになっています。そんな時に紹介されたのが、夢のような厚待遇の求人募集。これは行くしかないとのことで、事務所に行ってみます。その仕事は一風変わった移動動物園で、様々な場所に猛獣を連れて行って子どもたちを楽しませるものでした。しかし最近トラが死んでしまい、新たにトラを買うお金がない。そこで、トラの毛皮をかぶってトラのふりをしてほしいとの依頼でした。これを聞いたダメな主人公、自らが求める条件をすべて満たすばかりか、破格の日当を提示され、二つ返事をする始末。晴れて(?)トラを演じることになりました。檻の中でウロウロしているだけで大金を貰えることを喜んでいた男でしたが、突然「只今より、ライオンとトラの決闘ショーを行います」とのアナウンスが入ります。そしてなんと、檻の中にライオンが入ってきてしまい、男の運命やいかに。。。

演目に入る際に眼鏡を取るのが北鷹亭和鵬築流

 というお話でした。関西弁での演目だったのですが、非関西人である筆者にはとても自然な関西弁に聞こえ、大変迫力がありました。

 次は、すみれ亭東風こち(長谷川さん)の「那須与一」という演目でした。

 落語と講談の大きな違いの大きな違いの一つに、釈台や張り扇の有無という点が挙げられます。講談では釈台という小さな台を、張り扇というもので叩いて調子を出します。また講談は軍記物が多いそうなのですが、釈台を叩く音で迫力が出ます。

釈台はKaterie1階にある台で代用しています

 「那須与一」は皆さんご存じ、源平合戦の際に行われた扇の的を射抜く技術勝負の話です。

 合戦の小休止中に、沖合の船の中から女性が出てきて扇を高く掲げます。その姿は「この的を射抜いてみよ」という意味です。この挑戦を受け取った義経は、「誰かあの的を射抜く者はいないのか」と皆を見渡します。しかし誰も名乗り出ません。それもそのはず、もし的を外してしまったら末代までの恥、いや自分が末代になってしまいます。そんな中、那須十郎為隆に白羽の矢が立ちますが、十郎為隆は体を壊しているから無理だと断り、代わりに弟の与一宗隆を指名します。弱冠17歳の与一宗隆はこれを名誉と思い、覚悟を決め的の前まで進み出ます。源氏と平氏の両方が見守る中、与一宗隆は見事に扇の的を射抜いて見せ、現代まで弓の名手として語り継がれています。

十郎為隆が体調が悪いと断るシーン

 という話でした。筆者は講談を初めて見たのですが、国語の教科書で習った歴史上の話に色が付き、とても楽しく見ることができました。

 最後にもう一度、北鷹亭和鵬築による「お見立て」という演目でした。

 舞台はかの有名な江戸の遊郭・吉原。我の強い喜瀬川花魁が登場し、太客である杢兵衛大尽もくべえだいじんとの駆け引きが可笑しい廓話くるわばなしです。杢兵衛大尽がとにかくイヤな花魁は、自分が病気で臥せっていると伝えてくれと、中継ぎの喜助に頼みます。喜助は言われたとおりに「花魁は病気でして、、、」と伝えますが、そこは嫌われる杢兵衛大尽、「じゃあ見舞ってやる。俺が見舞えば病気も治ろう。」と引きません。困った花魁は自分が死んでしまったことにしようと「杢兵衛大尽さんに会いたいあまり、食事ものどを通らず、やせ細って死んでしまったと言いなさい。」と指示します。喜助がその通りにしたところ、杢兵衛大尽は「墓に参りたい」としつこく引き下がりません。焦った喜助は「墓は山谷(吉原の近く)」と答えてしまいます。花魁は「どこでもいいからこれが花魁の墓ですと案内してきなさい。」と言います。さて、喜助と杢兵衛大尽はどうなったでしょう。

戒名はなんだ、、、というシーン

 筆者は何度か浅草に通って落語を見たことがあるのですが、負けず劣らずの寄席で1時間があっという間でした。

 次回は8月もしくは9月に一般にお客さんを招いて寄席を開催するとのことで、今から次回が楽しみの筆者です。「柳田國男ツアー」が完成したら、落語にも挑戦してみようかと思っております。


文責
椎葉村地域おこし協力隊
移住コーディネーター 日本で最も美しい村連合アンバサダー
森崎慎也


ラインでも情報を発信しています。ぜひお友達になってください。