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【移住者インタビュー】移住に大切なのはスペックよりもフィーリング

自分にしか出来ないこと

今回は椎葉村の地域おこし協力隊OBで、現在「合同会社ミミスマス」の代表を務める上野諒(りょう)さんからお話を伺いました。

上野さんは2017年7月に、地域おこし協力隊の「秘境de農業」というミッションで椎葉村へ移住しました。
宮崎県宮崎市出身で、大学進学を機に上京しますが、就職後に配属先が宮崎市になり、図らずもUターンすることになります。
会社勤めの中ではストレスを感じることも多く、当時釣りや登山にハマっていたこともあって、自然を求め移住を考えだしますが、将来のことなどを考えた時に車で行ける範囲でとなり、たまたま募集していた農業のミッションに興味を持ち、椎葉村へ来ることになったそうです。


なぜ農業から会社設立に至ったのか気になり、最初にお伺いしました。

「日々農業に従事する中で、ビジネスというか、前職で培ったスキルなどを
生かして何かできるのではないかと思うようになったんです。現代のストレスを抱える人達がもっと中山間地域に行けばいいのに…と会社設立に至りました」

設立から3年目。
ミミスマスは「地域づくり」をテーマに、企業支援、官民連携の支援、アウトドアツアーの企画、ワークスペースの企画など、多岐に渡り活動しています。

「ずっとキツイですけど…毎日不安症ですよね。資金繰りのこととかメンバーのこととか。今どんなモチベーションだろうとか、お客さんとの関係うまくやれているかなとか、僕もそうですし。考えることは沢山あるけど、経営はすごく楽しいし、自分の成長に繋がってると思います」

「業務内容も今楽しくて、トガッたことやれてると思うし、ハッピーです」

今、仕事がすごく楽しいという上野さん。
移住6年目、椎葉村での暮らしはどうなのでしょうか?

「すごく個人的なことになるんですけど、やっぱり自分が幸せになったなと思います。前職では、組織の中で自分じゃなくてもいい仕事をやっていて、僕が辞めても回るし、お客さんにもたいして迷惑かからない。でも、今は僕じゃないと出来ないことがやれてると思うし、それは幸せなことですよね

社会の人混みの中で、自分の存在意義や価値、生まれた意味はあるのかと悩んでいる人って、沢山いると思います。
上野さんの場合は転職や移住になるかもしれないですが、何かのきっかけひとつでほんとに気持ちは大きく変わりますよね。

Katerie内コワーキングスペースでお仕事中の上野さん

何が大切で何が手放せるか

ただ、幸せを感じる反面、思うこともあると言います。

「自分が活躍できるフィールドというかジャンルを見つけて活躍できるのは、とても幸せなことです。ただ、自分はそうやって素晴らしいキャリアを見出したけど、妻は美容師で、どちらかというと都市部でキャリアを積みたいというのがあって。一緒に行きたいと言って来てくれたけど、本人がキャリアについて悩んでるんじゃないかなと。ここじゃなければ違う出会いやキャリアがあったかもしれないと思うと僕の中でモヤモヤするところがありますね」

ネット社会になりリモートも増え、場所にとらわれない働き方が増えてきたけれど、だからといって全ての仕事がそうではなく、出来ないこともある。
彼の言葉で、改めて考えさせられました。

「長い目で見て、自分のキャリアだけではなく妻のキャリアも考えていかなきゃなと思って、最近よく話しています」

自由になることもあれば、不自由になることもある。
出来ることが増えれば、出来ないことも増える。

自分や家族にとって、何が大切で何が手放せるか。
自分自身や家族と、じっくり向き合う時間を持つことは、とても重要なことではないでしょうか。


気軽に、でいい

上野さんは、「仕事の選択肢が少ないところ」は椎葉の短所だと言います。

「一度キャリアが止まると、後から戻ろうと思った時に難しくて、その選択肢の少なさをどうにか出来ないかなと思っています。」

逆に、魅力については

「昔ながらの良いところが残っていると思います、近所づきあいとか。家族や仕事以外にコミュニティーがあるのは、素敵なことだと思います。」

そう答えてくださいました。

ミミスマスが制作に関わったKaterieの交流ラウンジでインタビューさせていただきました。

椎葉へ移住を検討している人に一言お願いすると、少し悩んで

「ま、とりあえず来てみたらとしか言えないなと思っていて(笑)」

「なんか選択肢が多すぎると、人って行動出来ないじゃないですか。自然いっぱいなところなんて沢山あるし、釣りだって登山だって。農業だってそうだと思ってて。だから、(その土地の)スペックで選ぶんじゃなくてフィーリングでいいんじゃないかなって思います

さらに

移住っていうか、引っ越しくらいでいいんじゃないかなって。好きに引っ越してくればいいし、好きに出ていけばいいんですよね。来てくださいって言って入り口だけ大きくして出口が狭いなんて、コミュニティーとして空気が悪い。それを移住者である自分達がしてしまったら居心地が悪くなるから、気軽に来て気軽に出る、それくらいでいいと思います」

たしかに、移住と言うと一生って感じがしてしまう。
引っ越しのほうが身近だし、気負わないでいいかもしれない。
自分のために住む場所を選ぶのだから、もっと肩の力を抜いていいと、背中を押してもらったような気がします。


「きっかけ」ひとつ

休日は、ご家族で出かけることが多いという上野さん。
夏だと近場の川で遊んだり、ドライブがてら買い物や大きな公園に行って遊んだり。お子さん中心に過ごすそうです。

昨年はフルマラソンを完走して、今年もそろそろトレーニングを始めてトレランに挑戦したいとのこと。

仕事もプライベートも充実していて、今を楽しんでいるのがとても伝わりました。


きっと、今いる場所から一歩踏み出すことで、見え方も感じ方も大きく変わるんだと思います。
現状に満足出来ていないと感じることがあるなら、まずは一歩。
少し角度を変えるだけでも、何かひとつ「きっかけ」が見つかるかもしれません。