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【移住者インタビュー】住んだことで触れられた秘境の文化

来るたび「徐々に」

今回は、椎葉の子ども達に大人気、ALTのジュリーさんに話を伺いました。
椎葉村の小学校・中学校・交流拠点施設Katerieで英語を教えています。

お名前はジュリー・マリー・デュロ(Julie-Marie Duro)さん。
ベルギーのご出身で、高校で英語とフランス語の教師をしていました。他にも、写真美術館のアクティビティーで、子どもから大人まで写真の事を教えていたそうです。

大学で「哲学」を専攻していて、写真の哲学について学ぶうちに興味を持ち自ら撮り始め、大学卒業後も2年間写真を学び、フォトグラファーとしても活動されています。

ジュリーさんのおじいさんが日本と関わりのある仕事をしていて、日本の話を聞いていたのでずっと興味があり、20年ほど前に旅行で初めて来日しました。
それから10年後、2014年に写真家として参加したレジデンシープロジェクトで再来日し、3か月間の長期滞在。その後も何度かプロジェクトで来日し、四国と沖縄以外の都道府県を全て回ったそうです。

旅行やプロジェクトで日本に来るたびに「少しずつ…”徐々に”、日本を好きになって、日本の文化をもっと知りたかった」と、本格的に日本に来ることにしました。

「徐々に」は最近勉強したばかりで、さっそく使ってみたのだそう^^

ジュリーさん自作のピンホールカメラで撮影した椎葉の風景
※ピンホールカメラとは写真レンズを使わない針穴を利用したカメラ


旅行の景色が、毎日の景色に

4年前に移住し、当初は日本語をあまり話せなかった為、希望していた美術館の仕事ではなく、フランス語の教師をしながらプライベートで英語を教えていました。
最初の1年は東京で生活していましたが、住環境や生活スタイルが合わず東京が好きではなくなっていき、気付いたら日本まで嫌いになりそうでした。

「プロジェクトで来ていた時は、あんなに心が穏やかになったのにどうしてだろう」

そう思い考えてみると、自然の中にいる時が心地よかったんだということに気付き、自然に近い環境で働けるところを探し、椎葉村に来ることになりました。

東京の小さな個室のシェアハウスでは、自分の家だと感じられずに大きなストレスになっていたけれど、椎葉は部屋も広くて、窓から見えるのは美しい山だけ。旅行に行った時くらいしか見られなかったその景色を、毎朝コーヒーを飲みながら見られるのがとても幸せと言います。

ジュリーさんの部屋から見える景色
朝活で、書道をすることもあるそうです


やりたいことは「続けたい」こと

山が好きというジュリーさんは、椎葉村では国見岳が一番好きで、扇山も山小屋があってゆっくりお茶を飲んだりできて好きだそうです。
以前は大嫌いだった車の運転も、椎葉の道は綺麗な景色を見ることが出来るので、楽しんでいます。

たしかに、椎葉村は道が狭くて慣れるまでは大変ですが、上椎葉ダムの湖や山の連なりが美しく、時間帯や季節によって違う顔を楽しむことが出来ます。

他に何が好きですかと伺ってみると、

「日本酒!」

と即答。ジュリーさんは日本食も大好きで、ご自身で梅酒や梅干しを作ったりしていて、豆腐作りにもチャレンジしたことがあるみたいです。豆腐は上手に出来なかったそうですが、チャレンジするだけでもすごい!

逆に、苦手なのが「魚の目」。
小さい魚(ちりめんなど)も、「なんでこんなに沢山いる!?」と見た目が苦手らしい。本当に嫌そうな顔をしていたので、とても伝わりました(笑)

魚達から話題を変えようと椎葉の印象を聞いてみると、

「まずは山がきれい、そして人も優しい。仕事で子どもに教えているけど、少人数だから学校だけど家族っぽい。子ども達はとても心が優しい」

「観光や写真を撮りに来てた時は(日本の)文化に入れなかったけど、今は椎葉に住んでいるから、見えなかった文化が見れてとても嬉しい。神楽とか焼き畑とか」

コロナ禍に椎葉村に来た為、まだ見られていない椎葉平家まつりを見てみたいと言いますが、

やりたいことは”続けたい”こと。例えば、神楽は見たことあるけど大好きだから今年も見てみたい。『これはやったことがないからやりたい』はないけど、このまま続けたいことが多い」

ジュリーさんが、椎葉村での生活を楽しんでいるのが伝わります。

Katerieの英会話教室で教えるジュリーさん
この日は、ハロウィン仕様のツイスターゲームからstart


椎葉は人間のサイズの場所

インタビューの最後に、椎葉村に移住を考えている方へメッセージをお願いしました。

椎葉に来ると、はじめは保守的でルールも多く「慣れるまではキツイと思うけど、慣れたらすごく楽になると思う。だから少し根気を持ってください」外国から椎葉に来て、地域の繋がりが強く、自分の育ってきた環境や文化とは大きな差があったようです。

「とっても違うから、まずは自由が少なくなるけど、バランスをとって楽になると思う」

近所付き合いなど独特の距離感に戸惑うこともあったそうですが、

「(都会に比べ、世間が狭く)何も秘密に出来ないとか、まずはショック。でも皆知ってるからすごい安全と思う。スーパーに行ってもだいたい半分は知ってる人で、すごいイイ感じ」

東京や他の場所を”インパーソナル”と表現し、

「椎葉は人間のサイズの場所と思う。柔らかいとか温かいとか」

そう締めてくださいました。

人と人が足早にすれ違い合う都会では、その一瞬の風さえ冷たくて、沢山人がいるのにどこか寒くて孤独を感じることがありますよね。
人と人が会えば足を止めて声を掛け合う、そんな光景が椎葉村では日常で、本来それがあるべき姿ではないかと思います。

今回は中園本店でインタビューさせていただきました。
壁面にある沢山の本はレンタル可能です。


インタビュー後の雑談の中で「難しい日本語は何?」と聞いてみると、「考え方。考え方はとても違う、一番難しい」と返ってきました。言葉は分かるけど意味が分からない時があると言います。

「私は(日本特有の)空気が読めないけど、空気が大事。言葉の裏が分からない。」

ジュリーさん曰く、フランス語や英語にも空気はあるし、ロシア語など違う言葉の空気は難しいけど、日本はレベルがちょっと違うと(笑)

「日本語は空気をたくさん使う」

独特の表現で伝えてくれました。
生活の中でのマナーや言語・言葉の裏まで、難しいことや戸惑うことも沢山ある中で、それでも椎葉が好きで「続けたい」と言ってくれます。

ジュリーさんは普段お話をする時に、沢山「ありがとう」と言ってくれますが、こちらこそです。


日本を嫌いにならないでいてくれて、ありがどう。
椎葉を好きでいてくれて、ありがとう。