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めざすのは『賑やかな過疎』。現実を受け入れ、楽しむためにできること

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しています。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

上椎葉地区のご紹介

上椎葉地区は椎葉村の中心に位置しており、役場や病院、スーパー、ガソリンスタンドなど、村の主要な機能が集約されています。地区の人口は約770人と、椎葉村内では住民数が最も多いところです。

また、日本初の大型アーチ式ダムとして知られる上椎葉ダムや、国の重要文化財に指定されている鶴富屋敷など、観光スポットも多く見所のある地区です。

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2020年には、図書館やキッズスペースなどを有する交流拠点施設Katerieかてりえがオープンし、村民の新たな憩いの場として賑わいを見せています。

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人が減っても賑やかに。「住みがい」のある場所へ

今回お話を伺ったのは、そんな上椎葉地区に住む中園のぼるさんと、那須寿美すみさんです。

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騰さんは、手作りパンが人気のお店「中園本店」をご家族で営みながら、上椎葉地区の公民館長も務めています。

騰さん:「上椎葉みらい会議には多くの方が集まってくださり、様々な意見が出ました。どれも今の地区の現状と課題をしっかりと捉え、なんとかしたいという思いが伝わるものでした。普段は深く接する機会の少ない若い世代とも話してみると、しっかりとした意見を持っていて、とても頼もしく感じましたね」

公民館長として、また一住民として、椎葉村の中心地である上椎葉になんとか活気を取り戻したいと常日頃考えているという騰さん。しかしそれは自分だけではなかったという嬉しい気づきがあったようです。

騰さん:「そこから議論を重ねて、理想論ではない地に足のついたプロジェクトを生み出せたと思っています」

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公民館長も自信を持って打ち出したという、これから上椎葉地区で取り組んでいくプロジェクトの内容がこちらです。

<プロジェクト1> 皆で楽しむ!上椎葉チャンネル!!
介護のことを楽しく学べる動画を作成し、村内放送やSNSなどを使って発信する。動画の内容は、寸劇を交えた介護ノウハウの提供、住宅の改修について、認知症予防の体操など。
暗くなりがちな介護や福祉の課題について、楽しく情報発信をすることで前向きに取り組みたい。
<プロジェクト2> 平成17年を忘れない 防災プロジェクト
平成17年の台風による崖崩れで甚大な被害を受けた上椎葉地区。その教訓を胸に、関係機関と連携し、地区住民参加の防災訓練を実施する。
住民の命を守るため、災害に備えて地域の防災意識を高めたい。
<プロジェクト3> 1軒からはじまる商店街ワイワイプロジェクト
補助に頼らない事業として店舗の有効利用ができるように、事業者の募集や空き店舗の大家との交渉などを進める。
上椎葉商店街の空き店舗が年々増加しているため、地域活性化に向けて空き店舗を有効活用したい。
<プロジェクト4> プロジェクトKANPAI
地域住民が気軽に交流できる機会をつくるため、公民館でプロジェクトチームをつくり交流会を企画開催する。
上椎葉は仕事で赴任してきた方や嫁いできた方など地元出身以外の方も多く住んでいる一方、交流の機会は減少している。世代や職種を超えた新たな交流の機会をつくりたい。

今回の会議で作り上げたのは、この4つのプロジェクト。その背景にある思いを、騰さんはこう語ります。

騰さん:「これからの上椎葉や椎葉村を考える上で、私はにぎやかな過疎』という言葉を胸に掲げています。椎葉では、人口減少による過疎化は避けられませんし、受け入れなければならない事実です。どうにかして人を増やそうとか、過疎から脱却するためにということばかりに囚われるのではなく、この地ならではの良さを楽しむことが大切なんじゃないかなと思うんです」

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『賑やかな過疎』という言葉。

『過疎』や『僻地』というと、どこかマイナスなイメージを感じてしまいがちですが、それと相対あいたいするような『賑やか』という言葉と組み合わせることで、不思議と地域の新しい未来像が想像できるような気がしてきます。

騰さん:「『賑やか』というのは、お年寄りが集まっても賑やかになるし、魅力ある商店づくりをすれば、自ずと人は集まってくる。一人一人が地域に生きがい、住みがいを感じ、その環境を互いに支え合って保っていくことのできる賑やかな地区を目指して、プロジェクトを実行していきたいと思います」

前向きな老後を支えたい

お話を伺ったもうひと方・那須寿美さんは、椎葉村の病院で長年看護師をされています。

騰さん:「今回の地区みらい会議では、新たに活動に加わってくれるような人材を見つけるのも目的の一つだったんですが、寿美さんはまさにうってつけの人物でした」

熱い期待を寄せる騰さんの言葉に遠慮がちにはにかみつつも、寿美さんはその胸の内を語ってくださいました。

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寿美さん:「地区の困りごとを解消するために自分たちで動きたいという気持ちはあっても、皆それぞれに仕事や家族のお世話などがあったりして、なかなか行動に移すのは難しかったりします。そんな中、私個人としては子どもも手が離れてきた時だったので、今回のみらい会議があったことはとてもありがたかったです」

プロジェクトの一つ、介護を楽しく学べる動画チャンネルづくりには、特に思い入れがあるといいます。

寿美さん:「高齢になって動けなくなると、なかなか外に行けなかったり、入ってくる情報が限られてしまい、家族や近しい人との会話も少なくなると心身の孤立にもつながります。私は看護師をしている仕事柄、介護は身近なこととして捉えていますが、親の介護の必要性が目前まで来ていても現実としてなかなか受け入れることができないというような『介護する側の戸惑い』があるのもわかるところです」

お仕事を通して高齢の方々やそのご家族と密に関わっているからこそ、それぞれの立場の気持ちが理解できるという寿美さん。

家族間に見え隠れするデリケートな問題を、ずっしりと深刻に捉えるのではなく、肩の力を抜いて、時には少し笑ってしまうようなお年寄りの可愛らしい一面も感じてほしいと話します。

寿美さん:「そういった介護する側、受ける側双方へ向けたためになる情報を、笑いを交えて楽しく発信することで、椎葉での前向きな老後を応援するお手伝いができればと思っています」

できる人が、少しでもできることをやってみる。
その積み重ねがあれば、きっと現状は変わるはず。

そんな気持ちが寄り集まって、動き出した上椎葉地区。
これからの変化が楽しみです。


中川note_ライター






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