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諦めムードに流されない!生涯暮らせる地域づくりへ

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しました。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

栂尾地区のご紹介

栂尾つがお地区は4つの集落で構成されており、人口は約35名と椎葉村内で人口が最も少ない地区です。高鍋町の河口へと注ぐ小丸川の源流域に位置し、美郷町南郷区が生活圏域にあたります。

美しい小丸川

栂尾神楽や臼太鼓といった伝統芸能も継承されています。

田舎も都会も変わらない時代。活かせるものを見直す時

栂尾地区についてお話を伺ったのは、黒木真澄さんと、黒木美代子さん。お二人は栂尾で生まれ育った同級生です。

栂尾の公民館長を務める真澄さんは、若かりし頃に一度椎葉を出て、大阪で就職をしました。しかし真澄さんは長男だったので、いずれは帰るつもりでいたそうです。

真澄さん:「当時は椎葉に仕事がない(人が足りている)と親からも言われていましたが、なんとかなるだろうと20代半ばに椎葉に帰ってきました」

それからは建設業、山仕事など様々な仕事を経験し、今は村の中心部・上椎葉にある郵便局で働いています。

真澄さん:「トンネルが通る前は、中央(上椎葉)の集まりに行くことは少なかったです。村の消防出初式なんかは夜中の3時に家を出たり、雪が降ったら遠回りして峠を越えたりして」

2003年に中山トンネルが開通し、栂尾から上椎葉方面へのアクセスはしやすくなりましたが、当時のエピソードからは、同じ椎葉村と言えどそれぞれが遠い場所で、違う生活圏だったのだと伺えます。

真澄さん:今の時代、田舎も都会も変わらないと思っています。昔に比べてトンネルも通ったり、道路もずいぶん整備されて交通の便はかなりよくなりました。それに、インターネットの情報網も都会と遜色がない世の中。あとはこの土地にあるものを見直して、活かしていけたらいいですね

ということで、栂尾地区の資源を活かしていくためのプロジェクトが次の2つです。

<プロジェクト1> この地域で生涯暮らせる環境づくり
たのしみ農園、車に乗らない日の設定、たのもし会の発足、ボランティアグループづくりなどにより生涯暮らせる地域づくりを行い、情報誌によりそれらを発信する。生涯健康で助け合いながら地域で暮らしていきたい。

<プロジェクト2> つがもり会
1.鳥獣害の被害をなくすため、罠免許の取得推進や勉強会を行い、地域の状況把握に努める。
2.木や野草など地域のものをインターネットで販売する。地域の資源を有効に使いたい。

会議の中で声が多かったのは、獣害被害について。せっかく育てた農作物を収穫する楽しみをなんとか確保するため、罠免許の取得や獣害対策の勉強会を開くことが決まりました。

また、栂尾の自然の中にある木や野草などをインターネットで販売できないかというプロジェクトも。身の回りにある「当たり前」のものから知恵を絞ってお宝を発掘しようという、遊び心のあるアイデアです。

真澄さん:「私自身の子どもがまだ小さいのですが、山仕事をする時にはいつも楽しそうに一緒に付いてきます。私と同じように山を好きでいてくれることが嬉しいし、これからも自然豊かなこの土地を好きでいて欲しいです」

捨てたもんじゃない!この地で楽しみながら

美代子さんは高校卒業後、椎葉へ戻り、栂尾の郵便局に勤めました。当時は青年会の活動も活発で、他所に行こうと思わなかったと話します。

美代子さん:「栂尾の同級生12人のうち、残ったのは私たちふたり。長男は残って、女性は他の場所を見つけて出て行ったという感じです。役場や農協も遠くてこの辺りに仕事がなかったけれど、私は運よく職を見つけて残ることができました」

美代子さんと真澄さんのお話にもあるように、当時は人が多くて活気がある一方、他の地区との距離的な隔たりがあったため地区によってはその場所で仕事を見つけることが難しかったようです。

かつては栂尾も夏に祭りをしたり、女性だけの源流太鼓で女性が活躍する場を作ったり、地区の人数が多い頃にはとても活気がありました。

しかし時と共に若い世代が村外に出て人が減っていき、次第にいろいろなイベントや組織の運営が難しくなっていった背景があります。

美代子さん:「そんな中でも、地区出身で昔から自然が好きだった人は、今でも休みの度に帰ってきます。それは山で遊んだという記憶や、幼い頃に身についたものが大人になっても残っている証のように感じます

ずっと栂尾に住まない選択をしたとしても、離れて暮らす出身者とそういったつながりを持ち続けられることはとても嬉しいことです。

美代子さん:「自分たちの地区のことを皆で真剣に話す機会が普段はあまりないですが、今回のみらい会議では『真剣に考えているんだな、いい考えを持っているな、捨てたもんじゃない!』と思わされる場面がたくさんありました。『自分たちの状況はこうだ』と諦めのムードに流されずに、『自分たちでどうにかせんといかん!』という気持ちを持って、地区の人とのつながりを楽しみながら、この地でやっていきたいと思っています」

少ない人数ながらも、この場所で楽しもう、支え合おうという輪がはっきりと見えるこの栂尾地区。それは裏を返せば、人が少ないからこそ一人ひとりが精鋭であるとも言えます。

プロジェクト名にもあるように「この地域で生涯暮らせる環境づくり」に向けて、緩やかに変化を遂げるその姿を期待しています。


中川note_ライター




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