伝統を受け継ぎ、絶やさない地域へ。地元×移住者で生み出す秘境の新たなスタンダード
小崎地区のご紹介
小崎地区は人口約220人で、8つの集落で構成されています。
神楽や山法師踊りといった伝統芸能の継承が盛んで、地区主催の夏祭りも行われています。
また2020年3月に小崎小学校が閉校したことにより、現在は小学校跡地を活用した新たな構想づくりに取り組んでいます。
陽気に楽しく。すべてはその後についてくる
小崎地区についてお話を伺ったのは、那須博章さんと、椎葉智代美さんのお二人です。
博章さんは、小崎地区に継承されている山法師踊りの保存活動を行っています。
博章さん:「父親の踊る姿を幼い頃から見ていて、自然と憧れるようになりました。中学生の頃に山法師踊りを習い始めてから、今も保存会の活動を続けています」
今では村外に出ている博章さんのお子さんたちも、村の一大イベント・平家まつりでの披露の際には帰省して一緒に参加するそう。
しかし、ここ2年ほどはコロナ禍とあってイベントの開催も難しく、皆で集まって練習や披露をすることができない状況が続いています。
そんな中でも地域の大切な伝統芸能を継承していくために、小崎みらい会議ではいくつかのプロジェクトが立ち上がりました。
博章さん:「これまでも小崎では、住民の有志で劇団を立ち上げたり、ほたる祭りを企画したり、面白いことを考えては盛り上げてきました。皆、にぎやかに集まって楽しむことが好きな人が多い。そんな小崎の明るさを絶やさずに、これからのプロジェクトを進めていきたいです」
小崎の多様な文化を残すために話し合われたプロジェクトの数々が、こちらです。
心の拠り所を埋めるのは新しい風
小崎に生まれ育った椎葉智代美さんは、地区に伝わる郷土料理の伝統を絶やさないために、様々なレシピを本にまとめる活動を始めようとしています。
智代美さん:「子どもたちや後の世代に何かを残してやりたいという思いが強いです。私も何か、できることに取り組みたい」
そう話す智代美さん。小崎の好きなものを尋ねると、一番に「神楽」という答えが返ってきました。
智代美さん:「幼い頃から聞いてきた神楽の太鼓と笛の音を聞くと『やっぱり自分の地区が一番いいなあ』と感じますね。生まれ育った場所ですから。地元の神社にも思い入れがあります」
そんな愛着のある故郷。そこで大切にされてきた小崎小学校が2020年に閉校したことは、智代美さんだけでなく、地区の皆にとってもショックな出来事でした。
智代美さん:「例え児童数が少なくなっても、学校はあるものだろうとどこかで信じていたので、子どもの声がする小学校がなくなって心の拠り所を失ったような気持ちでした」
しかし今、その小学校跡地を再利用するための話し合いが活発に行われています。特に小崎に住む数少ない若者たちや移住者など、若い世代が一生懸命になって小崎のこれからの未来を考え、地区全体を後押しする力にもなっているようです。
智代美さん:「頑張っている若い人たちの姿を見るととても嬉しくて、頼もしい。私もできる限り支えたいという気持ちにさせてくれます」
これは、今回の小崎みらい会議を通して掲げた小崎地区計画のキャッチコピーです。この言葉には2つの背景があります。
1つ目は、小崎地区に外からの移住者が増えてきているということ。
2つ目は、小学校跡地利用計画を中心に、UIターンを促進する動きを起こしていきたいと考えていることです。
移住先として椎葉村を選んだ移住者たちの多くが今、小崎地区に住処を見つけて定住し始めています。
なぜ小崎にそういった移住者が増えているのか。
それは一重に、地元の方々が新参者を広い心で受け入れ、助け、程よい距離感であたたかく見守ってくれているからではないでしょうか。長く住み続ける人が多いのは、それだけ居心地のいい証拠です。
まさに、互いに助け合う「かてーりの里」。老いも若きも皆が集って入り混じり、笑顔が絶えないのが小崎地区の魅力です。
椎葉のお父さん、お母さんになってくれるという、なんとも頼もしく情に溢れた小崎の人々。その噂を聞きつけ、胸を借りにやってくる新しい移住者がさらに出てくるかもしれません。
そうやって人が増えることで生み出される活気が、村を離れた出身者のUターンの後押しとなれば尚良い。そんな好循環を目指しています。
とにもかくにも、小崎地区の壮大なプロジェクトはまだ始まったばかり。
移住者と地元の人とが混ざり合った”新時代の地域の在り方”を生み出し、秘境の新たなスタンダードの先駆けとなるのも、夢じゃないかもしれません。