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伝統を受け継ぎ、絶やさない地域へ。地元×移住者で生み出す秘境の新たなスタンダード

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しました。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

小崎地区のご紹介

小崎地区は人口約220人で、8つの集落で構成されています。
神楽や山法師踊りといった伝統芸能の継承が盛んで、地区主催の夏祭りも行われています。

また2020年3月に小崎小学校が閉校したことにより、現在は小学校跡地を活用した新たな構想づくりに取り組んでいます。

陽気に楽しく。すべてはその後についてくる

小崎地区についてお話を伺ったのは、那須博章ひろあきさんと、椎葉智代美さんのお二人です。

博章さんは、小崎地区に継承されている山法師やんぼし踊りの保存活動を行っています。

博章さん:「父親の踊る姿を幼い頃から見ていて、自然と憧れるようになりました。中学生の頃に山法師踊りを習い始めてから、今も保存会の活動を続けています」

今では村外に出ている博章さんのお子さんたちも、村の一大イベント・平家まつりでの披露の際には帰省して一緒に参加するそう。

しかし、ここ2年ほどはコロナ禍とあってイベントの開催も難しく、皆で集まって練習や披露をすることができない状況が続いています。
そんな中でも地域の大切な伝統芸能を継承していくために、小崎みらい会議ではいくつかのプロジェクトが立ち上がりました。

博章さん:「これまでも小崎では、住民の有志で劇団を立ち上げたり、ほたる祭りを企画したり、面白いことを考えては盛り上げてきました。皆、にぎやかに集まって楽しむことが好きな人が多い。そんな小崎の明るさを絶やさずに、これからのプロジェクトを進めていきたいです」

小崎の多様な文化を残すために話し合われたプロジェクトの数々が、こちらです。

<プロジェクト1> 小崎夏物語
毎年8月に公民館主体で夏祭りを行っているが、小崎地区をより盛り上げるため花火の打ち上げ、特産品コンテストの実施など内容の充実を図りたい。
子どもたちに思い出をつくり、帰りたいと思える地域にしたい。

<プロジェクト2> 魅せる小崎プロジェクト
1.地域の景観整備や看板づくり、ホタルの環境整備
2.地域の様子をSNSで外へ発信
3.小崎に興味がある人(移住希望者など)を巻き込んだ共同作業
四季を通じて美しい地域づくりをすることで、住民や訪れる人に楽しんでもらう。

<プロジェクト3> 守ろう!こざカルチャー 伝統食編
1.提供 夏祭りや冠婚葬祭などの行事、農家民泊の食事として伝統食を提供する。
2.伝承 地域のお年寄りなどから、伝統食を教わる機会をつくる。
3.記録 上記の活動をレシピ本や動画にまとめる。
地域の文化とも密接に関わっているふるさとの味を伝承することで、小崎らしさを後世につなげていきたい。

<プロジェクト4> 守ろう!こざカルチャー 伝統芸能編
●神楽
1.地区全体で神楽について話し合う場を設ける
2.将来を見据えて神楽のやり方を工夫していく
●山法師踊り
1.地区の文化祭など、実施の機会を確保する
2.参加意欲のある若者を積極的に受け入れる
人口減少の中でも神楽や山法師踊りが継承できるように工夫していきたい。

心の拠り所を埋めるのは新しい風

小崎に生まれ育った椎葉智代美さんは、地区に伝わる郷土料理の伝統を絶やさないために、様々なレシピを本にまとめる活動を始めようとしています。

智代美さん:「子どもたちや後の世代に何かを残してやりたいという思いが強いです。私も何か、できることに取り組みたい」

そう話す智代美さん。小崎の好きなものを尋ねると、一番に「神楽」という答えが返ってきました。

智代美さん:「幼い頃から聞いてきた神楽の太鼓と笛の音を聞くと『やっぱり自分の地区が一番いいなあ』と感じますね。生まれ育った場所ですから。地元の神社にも思い入れがあります」

竹之枝尾神社

そんな愛着のある故郷。そこで大切にされてきた小崎小学校が2020年に閉校したことは、智代美さんだけでなく、地区の皆にとってもショックな出来事でした。

智代美さん:「例え児童数が少なくなっても、学校はあるものだろうとどこかで信じていたので、子どもの声がする小学校がなくなって心の拠り所を失ったような気持ちでした

しかし今、その小学校跡地を再利用するための話し合いが活発に行われています。特に小崎に住む数少ない若者たちや移住者など、若い世代が一生懸命になって小崎のこれからの未来を考え、地区全体を後押しする力にもなっているようです。

智代美さん:「頑張っている若い人たちの姿を見るととても嬉しくて、頼もしい。私もできる限り支えたいという気持ちにさせてくれます」

地元有志の若者で結成された「小崎っ子」。SNSで情報発信中↓↓

あなたも「椎葉のお父さん・お母さん」を見つけられる!小崎地区

これは、今回の小崎みらい会議を通して掲げた小崎地区計画のキャッチコピーです。この言葉には2つの背景があります。

1つ目は、小崎地区に外からの移住者が増えてきているということ。
2つ目は、小学校跡地利用計画を中心に、UIターンを促進する動きを起こしていきたいと考えていることです。

移住先として椎葉村を選んだ移住者たちの多くが今、小崎地区に住処を見つけて定住し始めています。

なぜ小崎にそういった移住者が増えているのか。
それは一重に、地元の方々が新参者を広い心で受け入れ、助け、程よい距離感であたたかく見守ってくれているからではないでしょうか。長く住み続ける人が多いのは、それだけ居心地のいい証拠です。
まさに、互いに助け合う「かてーりの里」。老いも若きも皆が集って入り混じり、笑顔が絶えないのが小崎地区の魅力です。

移住者の古民家再生に加勢する地元の方々

椎葉のお父さん、お母さんになってくれるという、なんとも頼もしく情に溢れた小崎の人々。その噂を聞きつけ、胸を借りにやってくる新しい移住者がさらに出てくるかもしれません。

そうやって人が増えることで生み出される活気が、村を離れた出身者のUターンの後押しとなれば尚良い。そんな好循環を目指しています。

とにもかくにも、小崎地区の壮大なプロジェクトはまだ始まったばかり。
移住者と地元の人とが混ざり合った”新時代の地域の在り方”を生み出し、秘境の新たなスタンダードの先駆けとなるのも、夢じゃないかもしれません。


中川note_ライター


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