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温かさはきっと心に届く。ユニークさで乗り越える地域づくり

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しています。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

不土野地区のご紹介

不土野ふどの地区は椎葉村の西側に位置しており、熊本県水上村と隣接しています。

不土野上、坂本、不土野中、不土野下、古枝尾上、古枝尾下の6集落に、合わせて約120人の村民が暮らしています。ミニトマトや七草などの施設園芸農業が盛んです。

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季節の祭りは、春の的射や神楽などがあり、一年を通して地域の伝統とつながりを大切にしている場所です。

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さらに、公民館主催の歌謡選手権や、不土野小学校での子ども落語など、他の地区にはない独自の取り組みがあるユニークなところが魅力です。

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地区独自のアイデアが、地区を元気にする

不土野地区についてのお話を伺ったのは、椎葉武仁たけひとさんと、廣末ひろすえツユ子さんのお二人です。

現在の公民館長を務めている武仁さんは、不土野生まれの不土野育ち。大学を卒業後、県外や宮崎市でホテルマンとして働いていたそう。その後、30代半ばで椎葉に戻ってからのことをこう振り返ります。

武仁さん:「都市部ではご近所とも付き合いがなく、隣に住む人が誰だかわからないような暮らしをしていたし、それが当たり前でした。だからこそ、椎葉に戻った当時は地区の人との結びつきがあたたかく、まさに『かて〜りの里』だと実感しましたね」

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地域の温かみや団結力は、不土野地区独自の楽しい取り組みからも見てとれるようです。

そんな中でも、公民館長としてこれからの地区計画を考えた時、始めは何から考えていいものかと迷いがあったんだとか。

武仁さん:「一人で考えていてもなかなか難しいですが、たくさんの人が集まってみると色々な考えが出てきて、それに沿って3つのプロジェクトに集約することができました」

そのプロジェクトが、こちらです。

<プロジェクト1> 空き家の未来のドアを開けようin不土野
空き家利用を含めた地区での住居の確保を、行政と連携しながら進めていく。特に県道沿いの空き家については重要度が高いため、重点的に取り組む。
これから不土野に住む人のために空き家を活用して住居を確保したい。
<プロジェクト2> 富土野もりあげ隊
歌謡選手権をメインとした公民館主催のイベントの体制づくりを行い、イベントの安定的な実施や質の向上を図る。
地域住民の楽しみや外部との交流の機会をつくるため、今後もイベントを継続的に実施していきたい。
<プロジェクト3> 無人販売所をつくろう
無人販売所を設置し、農産物を販売する。加工品は許可が必要なため、手軽に取り組める野菜、乾物、木工品などから始める。当面の目標として、常に何かを販売している状況をつくりたい。
地域の農産物を収入に変えることで生活の楽しみにしたい。

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不土野地区では年間を通して様々な行事を催していますが、武仁さんがその中でも特に力を入れたいというのが「歌謡選手権」です。

武仁さん:「歌謡選手権の準備は、参加者の募集や会場設営、音響や照明機材の準備などとても手間がかかり、本番を終えてからの片付け作業は深夜にもなります。それでも地区内外から楽しみに参加してくれる人が年々増えてきて、『よかったよ、来年もまたやってほしい』という声をもらうと活力になります

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始めは不土野地区民だけで楽しんでいた歌謡選手権も、年を追うごとに他の地区からの参加者や観覧客が増えていき、今では村全体で楽しみにされるイベントに。

地域発信のアイデアがたくさんの喜びの声を呼び、それが地区の活気にもつながっています。

武仁さん:
「より安定的にイベントを行えるような体制づくりをするため、有志の集まりを『富土野もりあげ隊』と名付けました。あえて不土野の頭文字を『富』として、色々な楽しみに富んでいて、皆が一つになれるような地区づくりを目指していきたいという気持ちを込めました」

ここには何もないけれど、静けさがある

廣末ツユ子さんも不土野生まれ。高校時代を宮崎市で過ごし、その後椎葉に帰郷して以来ずっと不土野地区に住み続けています。

なぜすぐに椎葉へ戻ってきたのかを尋ねると、高校卒業当時を思い出しながら、このように話してくれました。

ツユ子さん:「とにかく街に居たくなくて、すぐに戻ってきたかった。中学から親元を離れて寮生活だったし、高校もそうでしょう。やっぱり家が恋しかったのね」

不土野小学校を卒業した子どもたちは、椎葉村の中心部にある椎葉中学校へ通いながら寮生活をします。それは当時から、今も変わりありません。

さらに、椎葉村には高校がないため、進学は自ずと村外となり、そこで寮などに入ることになります。

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ツユ子さん:ここには何もないけれど、静けさがあって。近所には親しい人がいて

街にあるものと、ないもの。
ではこの不土野には、何がないけれど、何があるのか。
そうやって比べてみると、自分が本当に大切にしたいものは何なのか、見えてくるようでもあります。

そんな住みなれた不土野の姿も、年々変わりつつあるとツユ子さんはいいます。

ツユ子さん:「以前は多かった隣近所も、次第に電気の点かない家が増えてきて、それだけが寂しいことです。でも、だからこそ、頑張らないといけない」 

今回の会議で決めたプロジェクトの一つとして、自分たちで無人販売所を設置しようと企画をしました。家で作った野菜を自分たちだけで食べるよりも、誰かが「美味しいね」と言って食べてくれる輪が広がればという思いからです。

ツユ子さん:「小さなことでも始めれば、コツコツとやっていくうちに知恵も出てきて、考えも増えてくるんではないかと思うんです。最初の土台づくりとして、まずはその一歩を少ない人数でも声を掛け合って始めていきたいと思っています」

無人販売所を通して、少ない商品からでも皆で出し合うことで、生産者同士の交流も生まれ、さらにはほんの少し自分の懐も潤う。それが回り回って皆の気持ちも幸せになれば、とても素敵な循環となりそうです。

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昔とは変わってしまった寂しさがある一方で、今いる人たちのつながりの強さがあります。

未来を変えるための、新しい一歩。
それは一人より、二人、三人と息をあわせて踏み出す方がずっと心強く、なにより楽しいはずです。

このユニークな不土野地区のさらなる先に何が待っているのか。
今からがとても楽しみです。


中川note_ライター


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