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十根川の大杉のようにでかく、長く、まっすぐに。人のつながりで地域をつなげる。

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しています。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

同級生に囲まれ、ごく自然に帰ってきた故郷椎葉村

今回お話を伺ったのは、鹿野遊かなすび地区の公民館長を務めている椎山操しいやまみさおさん。

椎山さんは鹿野遊で生まれ育った、鹿野遊小学校の卒業生です。

(鹿野遊小学校は2010年に閉校し、その校舎は現在「鹿野遊ふれあいセンター」として地域住民の集いの場などに活用されています。)

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椎葉中学校を卒業後は、都城の高専に進学して建築を学んだ椎山さん。
当時は大阪の建設会社に就職したいと考えていたそうですが、家庭の事情もあり椎葉に帰ることになりました。

夢半ばで地元に呼び戻されたような形だったのかと伺うと、「(椎葉に)帰っても同級生がたくさんいたから、嫌じゃなかった」と話します。

若者が故郷へ帰ってくるという選択肢が、今よりももっとごく普通のことだった頃。活気ある当時の椎葉村の様子が想像できるようです。

村に帰ってきてからは、役場職員として勤めた35年の間に、建設、農業、林業、税務、教育などあらゆる分野で椎葉のために力を尽くしました。

そして、役場を退職後、長年勤めの傍らで続けてきた米づくりに加え、冬は田んぼを耕して麦やにんにくなどの野菜づくりも始めました。
そこには、「親から引き継いだ山や田畑を後世に残したい、椎葉で渡世ができるようなものを自分で作ってみたい」という思いがあったからだと語ります。

”当たり前にあるもの”の魅力を見直す

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鹿野遊地区には、国指定天然記念物の「大久保のヒノキ」や「八村杉」が点在しています。
その迫力はまさに圧巻で、椎葉村内でも有数の観光スポットとなっています。

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さらに「十根川とねがわ重要伝統的建造物群保存地区」では、「椎葉型」といわれる独特の建築様式の民家とそれを支える石垣が並び、美しい歴史的景観を保っています。

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これらの自然や文化が地区の財産でありながらも、身近にある当たり前のものとして人々は暮らしてきました。

椎山さん自身、20代半ばからは鹿野遊地区を離れて椎葉村の中心部である上椎葉地区に住んでいましたが、7年前に生まれ育った鹿野遊地区・椎原集落に再び住み始めました。

そこで、改めてこの鹿野遊地区にある大木や伝統文化など「当たり前にあるこの地の魅力」を再認識したといいます。

みらい会議をステップに、人のつながりを強めたい

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2021年度、地域住民なら誰でも参加できるワークショップ「鹿野遊みらい会議」が開催され、その中で2つのプロジェクトが立ち上がりました。

どちらも、住民が主体となって委員会を構成し、取り組んでいくものです。

<プロジェクト1> 「鹿野遊マップ」を活用するプロジェクト
2021年に、鹿野遊地区の隠れた観光スポットをPRするための鹿野遊マップを作成した。鹿野遊マップを活用してより鹿野遊地区に観光客が訪れるような仕掛け作りをしていく。
鹿野遊地区の良いところをもっと知ってもらいたい。
<プロジェクト2> 「十根川フットパス」を体験型にするプロジェクト
既にフットパスコースが十根川集落にあり、集落としても観光客が歩いている状態に慣れてきてた。新たに、フットパスで訪れた観光客に対して四季折々の体験型観光サービスを提供できるような体制をつくっていく。長期的には鹿野遊地区の他集落においても同様に展開していく。
観光客に、地域の災害からの復興と地区固有の歴史や文化を感じてもらいたい。また、地区内で観光収入が得られるようにしたい。

「鹿野遊マップや、体験型十根川フットパスの仕掛けづくりを通して、自分たち自身で地区の動きに弾みをつけて、さらなる取り組みにもつなげて行きたいと考えています」

そう話す椎山さんには、今回のプロジェクトをきっかけとして、地区を盛り上げるための個々の意識向上をめざしながら、将来の鹿野遊地区を担う人づくりにつながる場を大切にしていきたいという大きな思いがあります。

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また、今回のみらい会議で見えてきた課題点もあったようです。

「女性の参加が少なかったのは残念でした。ことあるごとに女性が入って意見を言うという場を増やしていきたい。『本当はこういう部分が必要だ』というのは子育て世代でも、介護でも、女性の意見が必要不可欠

表のことは大黒柱のお父さんに任せて、女性は家庭を守るもの。
そういった風潮が当たり前に機能していた時代を経て、今、世の中は変わりつつあります。

それは椎葉村でも例外ではなく、女性の声がもっと上がれば、生かされる場所はたくさんあるはずです。

「鹿野遊は穏やかで大人しい性格の人が多いですが、内に秘めているものも大きい。そんな私たちだからこそ本音で語り、女性も一緒になって意見を出し合える雰囲気を皆で作り出していけたらと思っています」

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今年度のみらい会議で改めて地区の人々が一堂に集まり、考え、作り出している自分たちの地区プロジェクト。

それは目先の計画だけに留まらず、これからやってくる時代を受け止めながら、自分たちの迎えたい未来を自分たちの手で作っていく決意の場でもあるように思いました。

この地で過ごした先人や自分たちがこれまで守ってきた財産を、これからどう残していくか。あるいは変えていくか。

十根川の大杉のように、でかく、長く、まっすぐな人と人とのつながりが、これからの鹿野遊地区を支えていきます。


中川note_ライター


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