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予想できない未来を超えていく。人が減っても、ここだから紡げる幸せの形

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画を策定しました。
この記事では、椎葉村全10地区ごとに行った「地区みらい会議」で話し合われた地区独自のプロジェクトの内容や、地区を代表する方の思いをまとめてお届けします。

尾八重地区のご紹介

尾八重おはえ地区は4集落から構成されており、人口は約60名です。ひえつき節発祥の地であり、民謡の継承活動が盛んです。

また、扇山の登山口があり、5月には山開きのイベントが開かれます。山頂付近には、椎葉村の村花でもあるシャクナゲの群生地が広がっています。

扇山の山頂は標高1661m

最近では、村観光協会と連携した上椎葉ダム湖周遊ツアーも開催しており、村内外から観光客が訪れています。

『予期していなかった事態』を繰り返さないために

尾八重地区についてお話を伺ったのは、椎葉里美さんと、椎葉留美さんのお二人です。

椎葉里美さんは、尾八重地区の公民館長を務めています。

椎葉村全体の問題として、人口減少や少子高齢化が大きく挙げられますが、特に尾八重地区には子どものいる世帯がありません。

里美さん:「昭和63年に尾八重小学校が廃校になってから数十年経つけれど、正直言って、こんなに人が少なくなるとは思わなかったね

そう話す里美さん。本当にその通りなのだと思います。かつては子どもたちもたくさんいて、活気にあふれた賑やかな地域だった尾八重。時代の流れがこうも状況を変えてしまうなんて、想像もできなかったことです。

里美さん:「今思い返せば、『あの頃もっとこうしておけば良かった』と思うことがたくさんある。だからこそ、今しっかり地区の将来を考えていかなきゃいかん」   

今回の尾八重地区みらい会議で話し合ったプロジェクトの一つとして、尾八重地区独自で長年続けている「ひえつきの里大運動会」をよりよくしたいというものが挙がりました。
地区内外の子どもや大人たち、訪れる旅行者など受け入れる間口を広くして、来てくれる人誰もに楽しんでもらえるような工夫をすることでさらなる活性化を図ります。

里美さん:「尾八重は他の地区に比べても人口が少なく、自分たち以外の人も巻き込んでいかなければ何をやるにも難しい面がある。だからこそ地区外の皆に来てもらって、皆と共存していくという心構えを持っていきたい」

尾八重みらい会議では皆で知恵を出し合いました

『誰もが住みたくなる尾八重地区』

今回の会議を通して、尾八重の未来像として皆で掲げた地区計画のキャッチコピーです。
これをただの言葉とせず、この尾八重を次の世代に渡すためにできることをやっていく。

そのためのプロジェクトがこちらです。

<プロジェクト1> ひえつきの里大運動会の活性化
村外の子どもや孫、他地区の住民、移住者などたくさんの人に楽しんでもらえるように、運動会の内容や景品などを改善し、案内状を出す。
午前中に運動会を行い、午後には交流会をする。
地区独自の運動会を毎年実施しているが、尾八重小学校があった頃は子どもたちや先生たちがいてにぎやかだった。村外に出ている子どもや孫をはじめ、たくさんの人に来てもらえるように運動会を改善したい。

<プロジェクト2> 扇山でおもてなしプロジェクト
毎年5月に役場が実施する扇山の山開きイベントで、参加者へのおもてなしや産物の販売を行う。
扇山を活かして交流人口を増やしたい。

<プロジェクト3> 地区民で楽しめるサロンの会
地区民が広く参加できるサロンを公民館で自主開催する。
社協主催で老人会を主な対象にしたサロンが定期開催されているが、他の地区民も参加できるような取り組みをしたい。

この場所で楽しみ、幸せでいたい

椎葉留美さんは、30年以上前に椎葉村へ嫁いできました。里美さんとは、お向かいに住むご近所同士です。

留美さん:「尾八重は子育てをするにはとてもいい環境でした。子どもたちも地域の人に見守られながら、安心してのびのびと育ったことと思います」

にこやかに昔を思い出しながら話す姿から、かつてのあたたかな地区の様子が伝わってきます。

そんな留美さん、子育てを終えて時間に余裕のできてきた最近では、椎葉村の観光ガイドの勉強を始めたそう。

留美さん:「村外から移り住んだ者としての『外から見た椎葉村』は、地元の人が『こんなもんが』と思うものでも、本当はすごく価値があるという感覚があります。そういうものを大切にしたい」

観光ガイドの養成講座で熱心にメモをとる留美さん

これからの尾八重地区についてお話を聞く中で、留美さんが繰り返し口にしたのは「ここに住んで楽しみたい、助け合いたい、今いる人を楽しませたい」という言葉でした。

留美さん:人が少なくなっていても、自分たちの住む場所は変わりません。その中でどうやって自分たちが楽しめるか。これまでお世話になってきた年長者の方たちにも、一緒に楽しんでもらいたい。まずは今いる人を幸せな気分にさせたいし、私もそうありたいと思っています」

今こそ議論し協力して、自分たちの未来をつくっていこうという里美さんの情熱。
今いる人と今ある環境を大切にして、思い切り楽しみたいという留美さんの優しさ。

その両方が、この尾八重にとってかけがえのない力になる。そう思いました。

地区の未来を語る上で、一抹の不安を感じることもきっとあるはず。
それなのに、お二人の話を聞いているこちらが「きっと大丈夫」と勇気づけられたよう。

このあたたかな力強さが、尾八重地区の原動力です。


中川note_ライター


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